【よいこの記憶術】実践編。ほんとは記憶することから始まるのだ

【よいこの記憶術】が重要だと考えていることは、如何に簡単に記憶できるかということです。記憶することは学習の最初の段階に過ぎないのであって、学習は本来記憶そのもののことではないからです。現在の社会での入試制度などの関係から記憶学習がもっとも目的に適った効率を持つだけなのです。このことを理解していないとどんな記憶術が相応しいのか判断することはできないでしょう。

志望大学入学を果たした後は、記憶に基づいて考察し判断するという学習態度が求められます。考察、判断という思考の手法がその後の研究の基礎能力になるからです。この能力はまた就職などによって社会に出た後は当然のこととして要求されているのです。さらには社会の変化速度が速まった結果、現役を引退するまで、この能力が求められ続けることになります。

【よいこの記憶術】には3つの原則があります。それは「イメージ」、「連想」、そして「連結」です。これら3つの原則は人間の本性に基づいています。そして3つの原則を使って一つのイメージ・グループを形成するというイメージの構成モデルは日本人にとっては馴染みの深いものなのです。そのモデルとは歌舞伎のことです。伝統的に歌舞伎は日本人のイメージ構成の基本になっていて、私たちにとても使い勝手がよいのです。

歌舞伎での物語の進行には一つのパターンがあります。いくつかの、要素となる演技が適当な順番で始まります。しかし、それらの要素は目の前の舞台の一定の場所に配置されていきます。そして一つの舞台上に、演技で物語を語り終えた役者が揃ったとき、舞台上の役者たちは一斉にポーズ(見栄)を取って一枚の絵を作り上げるわけです。錦絵として切り出される場面は、この舞台の様子(止め絵)を描き出しているのです。

このように錦絵として描き出されることになる、歌舞伎の舞台の一場面は、観衆の記憶に格納されていきます。時間を追って演技され続けた結果、歌舞伎の舞台は一連の止め絵の連続として記憶されることになるのです。そしてそれは紙芝居のような記憶を残すことになり、民衆が歌舞伎の演目を思い出す時には、この止め絵の単位で思い出されるのです。これが日本人に受け継がれている記憶のメカニズムであって、モデルを作っています。

【よいこの記憶術】の要領も歌舞伎を観劇したときの記憶形成と同じ手順をとります。記憶のブロックが最終的な一場面、止め絵になっているのですね。記憶の要素を割り当てられた一つ一つのイメージは、歌舞伎での役者に相当します。それぞれの要素は何かを表しながら、記憶のイメージ画を描き出すことになります。さらにこの記憶のブロックが「連結」することで、さまざまなストーリを描くことができるのです。

再び記憶で終っては学習にならないと言っておきましょう。記憶は再現される必要があります。再現されて利用されるときに意味を持つからです。学校での勉強で言えば、記憶は学習の一部に過ぎません。記憶した内容を問題に取り組む時に、再生して適用するということが求められます。これが学校での学習です。社会に出てからなら、記憶した内容が業務において学校と同じように再生、適用が求められるのです。

ここで説明している記憶術、【よいこの記憶術】は使い始めたときからおそらく効果を発揮します。そして使えば使うほど、効率が向上するはずです。それは物事をイメージするという作業が、脳の活動にとって心地よいからです。ですから勉強が嫌いだと思っている子どもたちに学習指導をする時に、このやり方を一緒にイメージ画を作る作業を手伝うことで、成績不振に陥っていた子が伸び出したのでしょう。